工芸と和み

木彫師 鈴木清貴さん

木彫り工房・貴(たか)
鈴木清貴(すずききよたか) 

奥信濃飯山・千曲川のほとりにある自宅の納戸を改造した小さな工房があります。
今回は『木彫り工房・貴』代表の鈴木さんのインタビューです。


1954年 長野県飯山市生まれ
1973年 ノウビ工芸社入社(旧東部町、現東御市)
1975年 渡辺工芸入社(渡辺幸児さんに師事)
1977年 飯山にて独立
1978年 飯山仏壇の彫刻を始める
1993年 飯山仏壇店・山崎本店入社。
2003年 木彫り工房・貴(たか)開設。
2003年 ホームページ開設
2005年 信州木工会入会

木彫りをはじめることとなったきっかけは何でしょうか?

親が農業の傍らツル細工をしていたんですよ。野沢温泉の工芸品の鳩車(はとぐるま)などを作っていました。
長野県東部町(現在の長野県東御市)で農民美術の工芸屋さんに鳩車のツル細工を卸していたのがきっかけで、高校卒業後、農民美術の工芸品を制作するノウビ工芸社に就職することになったんです。

はじめは、木彫りなどの制作はさせてもらえず、彫刻刀を研いだり道具の手入れなどをしながら徐々に経験を積んでいきました。そこでは約2年間勤めることとなりました。その後は、ノウビ工芸社の時の先輩だった渡辺幸児さんの工房にお世話になるようになりました。

いま思い返すと、渡辺さんにはいっぱい迷惑かけてしまったな、と思います(苦笑)。
というのは、その当時から木彫りで食べていくというのは大変なんですよ。渡辺さんは木彫りの他にもいろいろ仕事をしながら家族を養っていたわけだけど、そこに僕もお世話になっていたわけですね。
寝泊まりは別の場所だったんだけれど、ご飯や給料をもらったりしていたんですよ。でも、彫った作品がどんどん売れるわけではないので...。
現在、同じ立場になってはじめて実感することですけどね。そんな中で渡辺さんに2年間師事しました。
東御市では仲間も沢山できたし、今も行き来しているので、いいつながりだと思っています。

それから飯山に帰ってきて独立したわけですね。

実家の家業の農業をしながら木彫りで作品を作ったり、野沢温泉とのつながりで工芸品を作ったりしてました。
また、仏壇屋さんとのつながりができて、仏壇の彫り物も始めました。
東御市での農民美術の木彫りと、飯山での仏壇の木彫りでは、全然彫り方が違うんですよ。農民美術は板彫りなどが多いんですが、仏壇は透かし彫りが多くて、勉強しながらほぼ独学で覚えました。そんな感じで仏壇彫刻を中心に15年ほど彫り続けました。
それで、37歳くらいのころかな...、仕事が厳しくなってきたということもあって、一回木彫りをやめようかと思ったこともあったんですよ。全然別の仕事をやり始めようかなと思い始めたころに、飯山仏壇店の山崎本店から誘いがあったんですね。

飯山仏壇といえば、伝統工芸品として有名ですが、実際の作業はどうでしたか?

山崎本店に入社してからは、仏壇をトータルで制作する方法を身に付けました。
組み立てから、彫刻部分を彫ったり、クライアントの要望で彩色したり、総合的に仏壇制作に関わっていました。
ここでは10年間働きました。これも製品サンプルを見ながらのほぼ独学ですが、飯山仏壇の現場の仕事を肌で感じる事ができたし、仏壇作りの行程に一から携わることができたので、貴重な経験だったと思っています。

そしていよいよ木彫り工房・貴を立ち上げるわけですね。今後の展開などお聞かせ下さい。

山崎本店を退職した後、再び独立しました。
『木彫り工房・貴』を開設して、変わらず仏壇の彫刻をしたり、木彫り教室を行ったりしています。
工房を開設した当時、ホームページも立ち上げたのですが、最近は問い合わせが増えてきて、特にオーダーメイドや修復の依頼が実際の仕事として実を結ぶというケースがかなり増えました。
「木彫り」ってかなりニッチですよね(笑)。でも探している方はかなりいらっしゃるみたいです。こういった問い合わせの中で、それぞれのお客さんのニーズを察知して提案していくスタイルでやっています。

ただ彫るのではなく、かなりクリエイティブな仕事内容ですね。

はい。側面からの写真1枚をもとに図案を起こして木像を作った事もあるし、ただ彫るという作業ではないですね。
オーダーメイドの場合、はじめの提案段階では色々苦労する事もありますが、今後もつながっていく仕事が多いので、やりがいもありますし、とにかく迅速・丁寧に対応しています。
今後はネット上からのつながりも大事にしていきたいですね。

和める瞬間はありますか?

仕事の面で言うと、作った作品がイメージ通りに仕上がった時なんかは良いですよね。その作品を見ながら和めますよね。 最近の仕事では、ひょうたんスタンドは自分の中のイメージに近くなってきていています。試行錯誤はかなり繰り返しているのですが、ようやく形になってきたかなと思っています。

最後に、作品を紹介して頂けますか?

・クジャクの透かし彫り
仏壇彫刻をやり始めたころの作品なので、まあ処女作ですかね。
素材はベニマツを使っています。だいぶ昔の作品なのでベニマツもだいぶ焼けて赤黒くなってきました。当時は白かったんです。


・龍の木彫り
透かし彫りの二枚重ねです。この二枚重ねの彫り方はオリジナルの技法です。素材はヒノキを使っています。
彩色は仏壇制作で培った技術です。木に彩色するときは、意識して薄く塗らないと目の感覚が麻痺して濃くなってしまうので、気を使っています。彩色も何回もの行程に分けて念入りに行っています。


・ひょうたんスタンド
ひょうたんの皮から明かりが少しもれるように、中身は限界まで彫っています。外側の文様は「彫る」というよりは「彫り抜く」という感じで彫っています。
木彫りのジャンルの中では変わったスタイルなのですが、このスタンドの明かりをよりきれいに見せる方法として最適だと思っています。
作品を作る時には、彫り方にはこだわらず、作品をより良く見せることを思いながら作っています。
いいきっかけもあって作り始めたのですが、このひょうたんスタンドは気に入っています。作品を作る時には、彫り方に工夫をしてみたり、和紙をはったり、彫らないで絵付けをしようか、などなど常に試行錯誤を重ねています。


木彫り工房・貴のホームページはこちら

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